
夫婦関係の問題に休息はありません。こんな時どうしたらいい?誰にも相談できない夫婦の悩みをちょっとだけ軽くできたら。LifeDesignLaboの読む夫婦カウンセリングです。

「夫の実家に帰省するのが憂鬱なんです」
今年も残すところあとわずかとなりました。この時期になると、街の慌ただしさと反比例するように、重い足取りでカウンセリングルームを訪れる方が増えるのですが、この時期特有の話題のひとつが「義実家への帰省問題」です。
「夫の実家に帰省したくない」
コロナ禍で帰省しない数年を過ごしたからこそ、永年言えなかった本音に気がついた、というケースも多いようですが、この問題、夫婦の根幹を揺るがしかねないから注意が必要です。
「実家=ホーム」と「義実家=アウェイ」
久しぶりに孫に会えることを楽しみにしている両親へ、子どもたちの元気な姿を見せたい。それは家族として至って自然な気持ちです。でも、その一方で、夫や妻の実家に伺うというのは、どこか気が重くなるのもまた、理解ができます。
気を遣っても、遣われてもなんだか疲れてしまう。そこには、「自分にとっての実家はホームでも、夫や妻の実家(義実家)はアウェイの異文化コミュニティである」という決定的な構造の違いがあります。
生まれ育った実家であれば、暗黙のルールも独特な空気感も熟知しています。でも、夫や妻の実家は食事の味付けからタオルの畳み方、洗濯物の干し方まで、あらゆるものが独自の価値基準で動く「アウェイ」の場。義両親との関係がどんなに良好であっても、目に見えるもの見えないものを問わず、自分の感覚と少しずつ違いを感じさせる環境というのは、常に緊張感が伴います。
そんな中でいっぽうだけが独身時代に戻ったような立ち居振る舞いをしていると、その場では何も起こらなくても見えないわだかまりが心に残ってしまうのも頷けます。
帰省を無事に終えるために押さえておきたい3つのポイント
せっかくの帰省を楽しいものにするのはもちろん、こじらせて不要なわだかまりを残さないためにはどんなことに気を付けておけば良いでしょう?
ここでは3つのポイントに整理をしてみました。
- 主語を「私たち」にする
食事や子どものゲーム時間など、親世代との価値観の相違が起きやすい場面では、主語を一人称複数形の「私たち」に統一することが大切です。
カウンセリングでもよくお話をするのですが、言葉の「主語」を何にするかは、単なる文法の問題ではなく「誰が責任を負うか」という覚悟の表明として重要です。ちなみに「私」は一人称、「妻が(夫が)」は三人称です。
例えば何かを断る時、つい「妻がこう言っているから」「妻が疲れているから」と、三人称を主語にしてしまいがちですが、これは無意識に自分を安全圏に置いている状態なのかもしれません。両親からすれば「息子はいいと思ってるのに、嫁が止めている」ように見えてしまう恐れがあります。
「僕たち、明日はゆっくりしたいと思っているから、朝食は気にしないでね」(一人称複数形)
と、言い換えると夫婦二人のライフスタイルとして尊重されやすくなります。
- 両親との間に入る
アウェイの地に立つ側にとって、頼みの綱は夫(妻)です。特に、両親とのコミュニケーションは、その血縁者である側が率先して引き受けるというのが原則。「2、3日の事なんだからうまくやってよ」ではなく、うまく間に入ってあげることが重要です。
OK:親→妻(夫)/自分 NG:親→自分/妻(夫)
この立ち位置を取るイメージですが、これ案外難しいんです。
例えば両親から「今日はみんなで買い物に行こう」と提案された時に、「どうする?」と妻(夫)に意見を聞いてしまうのは、妻の意見を尊重しているようで実は妻を矢面に立たせてしまうことになります。(親→妻(夫)/自分)
ここでは「今日は疲れているみたいだから、ゆっくりさせてあげたいんだよね」と判断を妻(夫)に委ねないことが大切。(親→自分/妻(夫))
このポジション取りができると、妻の(夫の)の心理的負担感が随分和らぐはずです。
- アウェイからの「避難経路」を確保する
義実家のアウェイな環境で長時間過ごすのは、想像以上にエネルギーを消耗するものです。
「家族だけで買い出しに行ってくる」と外に連れ出したり、あえて宿泊はホテルを利用したりと、物理的に「別々の時間」を作る工夫も有効です。「いざとなったらひと息つける場所がある」という安心感が、心の安らぎに繋がります。
「羽を伸ばす場所」から卒業する
「あなたはいいわよね、何もしないでテレビ観て飲んでばかりで」
実家は、懐かしい思い出に浸って、羽を伸ばす場所でもありますが、新しい家庭を築いた今、帰省というイベントは「自分たち夫婦が、親世代とどう健全な距離を築くか」を試されるステージでもあります。
ただし、毅然と振る舞うことが「親を拒絶すること」にならないよう注意も必要です。「僕たちはこうしたい」と伝えつつも、「会えて嬉しい」という感謝は言葉にする。親を敵に回すのではなく、自分たちの今の形を丁寧に伝えていく意識が、結果として妻(夫)を守ることにも繋がります
その上で、「彼女は(彼は)今、どんな気持ちで過ごしているか」と想像し、気持ちに寄り添うこと。そんな歩み寄りこそが、これから先も長い人生を共にする二人の、揺るぎない「つながり」を作ってくれるはずです。
加えて、帰省がどうしても心身の負担になりすぎる場合は、無理をせず「行かない」「距離を置く」という選択も、家族を守るための正当な手段であることはいつも念頭に置いておきましょう。