夫婦関係の問題に休息はありません。こんな時どうしたらいい?誰にも相談できない夫婦の悩みをちょっとだけ軽くできたら。LifeDesignLaboの読む夫婦カウンセリングです。
夫婦が別々に暮らすというのは、少なからずリスクを孕んでいます。
それが単身赴任など夫婦関係の不和や行き違いによるものでなかったとしても、生活の拠点が分かれることで見えなくなるものは必ずあり、見えないところに不安な気持ちは生まれるし、また見えないことで良からぬ出来心が忍び寄る事もあるかもしれません。
以前の記事「一緒に暮らすのが苦しいと言われました。」では、望まない別居について、どのように捉えてみるか、カウンセリング的な切り口からお話をしました。
また「実家に帰って夫を反省させたい」では、距離を置く選択の前にとっておくべき行動について考えました。
今回は、実際に「別居」に潜むリスクと、「別居」を経ても夫婦関係を改善できたケースを参考に、夫婦関係の改善と別居について考えてみたいと思います。(事例はクライエントの了承をいただいた上で、抽象化しています)。
なぜ、離れたくなるのか?
まず、別居をしたいと考える側には、どんな理由(心理的背景)があるのでしょう。
ひとつにはそれによって何らかのメリットがある、という場合。まず頭に浮かぶのは、浮気や不倫ですが、実はこのケースはあまり多くはないと思っています。不貞行為があるなら、まずはそれを隠そうとするのが自然ですから、あえて疑われるような選択は取らないものです。
だとすれば、どんなメリットが考えられるのか?
有力なのは、制約なく自分のペースで生活ができる、ということでしょうか。仕事が多忙であったり、趣味が多いタイプの人であれば、気を遣わずにしたいことに没頭できる、というのは大きなメリットでしょう。
もちろん、時間が自由になれば気分も開放的になりやすいものですから、結果として夜遊びや浮気のリスクは高くなるかもしれません。そういう意味では、潜在的に浮気のリスクが潜んでいるということは、やはりあるのかもしれません。
別居を切り出す側の理由として、もうひとつ考えられるのは、メリットを求めてではななく、今あるストレスから逃れたいという場合です。
結婚生活では、時に自分にとってのベストな選択や生活のペースを諦めざるを得ない場合があります。小さなお子さんがいる家庭なら自ずと子ども中心になるものですし、そうでなくとも「元々は他人同士」の夫婦ですから、生活の中には様々な「違い」が潜んでいます。
夫婦関係や円滑な生活を優先するために「違い」を受け入れたり、「違い」に寄せていくことは誰にでもあることですが、そればかりだと段々窮屈に感じることが増えてしまいます。
家にいるのに安らげず、自分の居場所がなくなってしまったと感じ始めると、そんな環境から逃れたい、という気持ちが生まれるのも理解できます。
また、生活を共にしているのに、家事や育児にほとんど協力する気持ちが感じられない(気持ちはあっても実働が伴わない)、という場合にも、メリットよりストレスが勝ってしまう、ということもあるでしょう。
メリットを求めて、あるいはストレスから逃れるために。
具体的な理由は様々ですが、大きくはこのいずれか、または両方が重なり、更に仕事での負荷や体調の変調などが加わって、「別居」という選択肢が生まれるのではないかと思います。
離れてみる効果
様々な理由から、別居を選択せざるを得ないとしても、それが必ずしも夫婦関係にとってネガティブな結果をもたらすとは限りません。むしろ離れてみたことで、夫婦関係に後々ポジティブな結果があったというケースもあります。
例えばこんなケース、
夫の一方的な希望で3年に渡り別居も、定期的に夫婦だけでの食事や子どもを交えた旅行には行っていた。子どもの中学受験を機に、同居を再開することになった。
これは別居中も夫婦・家族としての関係が維持されていたたケースです。定期的に対話やイベントがあって、その積み重ねの中であらためて夫婦としての信頼関係が再構築されていったことが同居の再開につながった事例といえます。
こんなケースもあります。
育児に関する口論から育休中の妻が3日間家出、ホテルに滞在することに。その間、3人の子どもは夫が見ることに。家出中に妻は気持ちの整理がついたため帰宅を決意。夫は妻不在中の育児と家事を通してワンオペの現実を体感できた。妻の帰宅後、夫婦で対話をし、お互いに謝罪、継続的に対話を通して家事・育児の分担などを話し合うことになった。
家出の事例ですが、見方によっては短期的な別居ともいえます。物理的な距離を置くことで冷静になれたことと、強制的にではありますがワンオペという立ち位置に立ってみたことで相手への理解が深まったことが早期の問題解決に踏み出す結果につながった事例です。
度重なるケンカから夫がウィークリーマンションを契約して別居。当初は離婚を希望し、取り付く島もなかったがひと月ほどで態度が軟化。関係修復を前提に定期的に対話を続け、2ヶ月で別居は解消。
一時的に離婚にまで発展しそうになったケースですが、別居でストレスと心の負荷が軽くなったことで関係性を見直すための話し合いができるようになった事例です。話し合いではそれぞれが感じていた不満を冷静に出し合えたことで、今後どうすれば良いか?について検討できる状態になりました。
以上のように、「別居」を通して夫婦関係にポジティブな結果が出たケースを見ていくと、
1)別居後もコミュニケーションが取れている 2)離れることで冷静さを取り戻している 3)別居が相手を理解するきっかけになっている
という共通点があります。
別々に暮らすことでコミュニケーションの量や頻度はマイナスになっても、心理的負荷が減る分、コミュニケーションの質が向上する場合がある、ということはポジティブに捉えておいても良いのではないでしょうか。
また、ふたつめの事例のように、家事・育児の分担がスイッチすることでそれぞれ違ったアングルで日常を体験できることは、相手側の負担やストレスを理解する上で有効です。
ただ、それは同時に負荷がいっぽうに大きく偏ることを意味しますから、長期化すると新たな問題を引き起こす可能性もあることは念頭に置いておく必要があります。
別居のリスク
確かに、離れてみることの効果はある。けれどやはり「別居」というのは不安で怖いものです。
まず、別居を望まない側から見れば、コミュニケーションの頻度・量が減ることは寂しいことですし、相手の行動が見えなくなることで不安な気持ちになるのは自然なことだろうと思います。
別居のリスクは、と考えるなら、まずはこのメンタル不調が最初に挙げられるのではないでしょうか。もちろん、浮気や不貞行為の温床になりうる、ということもリスクなのですが、それ以上に心の安定が脅かされることの方がより深刻です。
不安な気持ちで相手を見れば、何か隠し事をしているようにも思える場合があるでしょうし、心配な心持ちではこれからのことをポジティブに考えることも難しいものです。
メンタルの不調は、そのこと自身もツライことですが、不安や怖れの感情を夫婦関係に映し出すことで、コミュニケーションや考え方にまでネガティブな影響をもたらします。
いっぽう、距離を置くことを望む側とすれば、ストレスやフラストレーションから何とか逃れたいという気持ちから、時に強い態度に出てしまうこともあるかもしれませんが、強硬な姿勢は、夫婦の信頼関係を大きく傷つけてしまう場合があります。
別居のリスク ・コミュニケーションの頻度と量が低下する ・浮気や不貞行為の温床になりやすい ・家事・育児の負担が偏りやすい ・メンタル不調が生まれやすい
では、起こりうるリスクを回避するにはどうすればよいでしょう?
リスク管理とコミュニケーションの再構築
別々で暮らすことのリスクをできるだけ抑えておくことが、夫婦関係を改善する上でとても重要なのは言うまでもありませんが、では実際にどのように取組んでおくけば良いでしょう?
まず、可能な限り別居の期間は短くすることが大切であろうと考えています。先の事例にもありましたが、年単位での別居から関係を修復できたケースもないわけではありませんが、別居の期間が長くなるほど、戻るための物理的・心理的ハードルは高くなることが予想されます。
冷静になってみる、冷却期間を置く、という目的であれば、3週間もあれば充分だろうと考えます。また、仕事のある平日はウィークリーマンションで、週末は自宅で、といった距離のとり方も検討できるのではないでしょうか。
次に、不安や心配事はできるだけ小さくする工夫と配慮を持っておくことも必要です。
- 連絡手段の確保
- 日々の安否確認
- 保育園の送り迎えなど、育児分担の軽減
- 飲み会や出張など、相手が不安になりそうなイベントの事前共有
など、予め取り決めできておくとベターです。
もちろん、そもそも冷静に話し合いができる状況でないから家を出るのに、取り決めをするなんてできない、と思うかもしれませんが、大切な話し合いができる状況でないほど冷静さを失っているとしたなら、その状態で夫婦の関係に大きく作用するような選択をすることは避けたほうが良いようにも思います。
夫婦関係を修復するための別居
たとえ別居をしても夫婦の関係を守りたい、別居を通して夫婦の関係を改善・修復したい、と考えるなら、感情的な衝動だけで動かないこと、離れた後のことをきちんと考えておくことが必要です。
要チェックポイントとしては、
□ コミュニケーション手段は確保されているか? □ 定期連絡の方法は確認できているか? □ 育児等の協力体制は確認できているか? □ 期限は確認できているか? □ 所在は確認できているか? □ 別居の目的は共有できているか?
これらについて、確認できていると少し安心できるのではないかと思います。
特に、別居の目的を共有しておくことはとても大切です。隠れた目的や意図があると、夫婦関係の改善につながりにくいことはもちろん、お互いにとって貴重な時間とエネルギーをただ消費するだけの結果になってしまうこともあり得ます。
ここまで、夫婦関係を改善・再構築することを念頭に別居について考えてみましたが、実際には関係改善や修復を目的としていない別居というのも、もちろんあるはずです。
育児のパートナーとして戦力になっていない、人生を共有する相手として信頼ができない等、夫婦関係の土台が揺らいでいる場合には、離婚をも視野に入るモラトリアムとしての意味合いが強いのかもしれません。
それでも、今すぐ離婚を選択をしないのであれば、取り組んでおくことは大きく変わらないのではないかと思っています。
未来のことは置いておいても、関わる部分がある限り少しでも良い関係であったほうがお互いに気持ちよく過ごせるはずですから。