ネガティブな感情から目を逸らさない勇気
感情的になって冷静に話せないことも問題なら、感情的なコミュニケーションがうまくとれない、という問題もあります。
楽しいことも、嫌なことも、大切な人と共有したくなるのは自然な欲求です。けれど時として夫婦の間では、ネガティブな感情を共有できなくなってしまう場合があります。
愚痴のように聞こえるのが嫌だったり、ふたりの時間にわざわざネガティブな話をしたくなかったり、あるいは弱い自分をせたくなかったり。
理由は様々でも、ネガティブな感情をなんとなく共有しづらいというのは多くの人が経験したことがあるのではないでしょうか。
とりわけそれが、夫婦関係や相手とのことに直接関わるようなことであればなおのこと。
なんとなく話せないまま、時間とともに気にならなくなってしまうのが常でも、そうやってすこしづつ呑み込んできた感情がやがて得体のしれないわだかまりに育ってしまうこともあります。
ケンカの度に感情的になってしまう、必要以上に相手を責めてしまう、というような時には、そんなわだかまりがあふれているのかもしれません。
本当は相手に見せたくないようなネガティブな感情も、大きく育ってしまう前に共有できたなら、不用意に飛び出して自分も相手も傷つけてしまうことを避けられるのではないでしょうか。
ネガティブな感情から目を逸らさないことも、夫婦関係を守ることにつながるのではないかと思っています。
ネガティブな感情をスパイスに
感情を味覚に喩えることが、しばしばあります。
好きなものも、ずっと食べ続けていると飽きてしまうように、楽しいことも毎日続けば楽しく感じられなくなってしまう場合があります。そんな時には、味を変えるスパイスが料理に欠かせないように、夫婦関係にも、時にはネガティブな感情の共有が必要なのだと思うのです。
楽しい気分やポジティブな感情を共有できることは素晴らしいことです。
だからこそ、寂しさや悲しみ、時には怒りに至るまで、分かち合う勇気を持つことができれば、夫婦関係はいっそう豊かになるのではないでしょうか。
ただし、よく利くスパイスがそうであるように、ネガティブな感情もまた、利かせすぎると夫婦関係を台無しにしてしまう場合があるから注意が必要です。
適度な量で、それがどんな作用をもたらすのか?ということを、自分自身が理解しておく必要があります。
感情への理解を深める
感情にはそれぞれ役割と作用があって、もちろんネガティブ、といわれる感情も例外ではありません。
悲しみには傷ついた心を癒やす作用があるし、人と人を近づける働きもあります。いっぽう、怒りにはこれ以上傷つかないよう人間関係を調整する作用があります。
夫婦の関係を改善するための取組なら、悲しかった出来事や思い出についてシェアする時間はふたりの繋がりを育むうえで効果的かもしれません。いっぽうで、腹の立った出来事の共有は、ふたりの間に距離を作ってしまう場合があるので注意が必要です。
ただ、腹が立った出来事も、ひとつ深めて見つめるとそこには悲しみが潜んでいる場合がありますから、怒りのひとつ下まで深めてみることで、一層深いシェアになることもあるのではないでしょうか。
いずれにしても、ネガティブな感情とうまくつきあうことが、夫婦関係にとっては欠かせないアプローチなのではないかと思っています。