夫婦関係の問題に休息はありません。こんな時どうしたらいい?誰にも相談できない夫婦の悩みをちょっとだけ軽くできたら。LifeDesignLaboの読む夫婦カウンセリングです。
「実家に帰らせてもらいます。」
仕事にばかり偏って家庭のことを顧みない、自分勝手で家族のことを気にかけない。
そんな夫に反省を促すために別居を突きつける。悪くない方法のようにも思いますが実際はどうなのでしょう。
少し前のホームドラマでは「実家に帰らせていただきます」と書き置きを残して、子どもを連れて実家に戻る、そんな場面を度々目にすることがありました。
夫婦の間に起こる別居事案のロールモデルとも言えそうなシチュエーションですが、現在進行形で別居に至るご夫婦を多く見ていると、随分、状況が違う印象を受けます。
「実家に、」のシュチュエーションでは、離れる事が夫に反省を促すためのきっかけとして描かれていることが多いように思いますが、これが成り立つのは、前提としてお互いが夫婦関係を維持する立場に立っている場合です。
以前と比べて離婚のハードルがずいぶん低くなっている今、夫婦のあり方についても多様な考え方が見られます。
無理とガマンをしてまで、夫婦関係を維持するよりも離婚して新しい関係性を築いたほうが良い、と考える方は確実に増えていますし、そんな考え方が浸透しはじめているが故に、案外簡単に離婚のハードルを越えてしまうケースも増えています。
反省を促したいという背景には、夫婦関係を改善するという前提があるのだと思いますが、その前提は果たして夫婦間で共有されているのか?
ここは慎重に吟味しておく必要があると思います。
もし彼の側に、夫婦関係を維持するという前提や、関係を良くしようというモチベーションがなかったとしたら、反省を促すどころか夫婦関係に大きな傷跡を残してしまう場合もあります。
「子どもを連れて妻が出て行ってしまいました」
以前の記事「子どもを連れて妻が出て行ってしまいました」ではアングルの違いが夫婦関係の問題を難しくさせる、というお話をしました。
ひとつの出来事も、アングルが変われば捉え方・考え方、そこにある感情までが異なってきます。
こちら側からは関係改善を前提とした行動であっても、向こう側から見れば信頼関係を傷つける、時には夫婦関係を壊す行為にさえ見えるのかも知れません。
「夫に反省してほしい」と、感じている問題があるのであれば、まずはそのことをきちんと彼にも理解してもらう必要があります。
その為にも、できるかぎり同じアングルで、問題意識を共有することが大切なのだと考えていますが、お灸をすえるつもりが、取り返しのつかない結果につながったり、頭を冷やしてもらうはずが逆に炎上してしまう、という事態だけは避けたいところです。
問題意識を共有する方法
きちんと反省をしてもらいたい、そう考えることに問題はありません。困ったことや傷つくことがあったのであれば、そこはちゃんと理解してもらう必要があるし、繰り返さないよう対策を立てることも大切でしょう。
そのためにはまず、本人が問題を認識しなければ、うまくは進まないものです。
ところが、「問題を認識する」というのは、やはりちょっと抵抗があるものだと思うのです。責められているように感じることもあれば、否定されていると考えることもあるかもしれません。
そうなると、却って頑なになってしまったり、攻撃的な態度になってしまうこともあるでしょう。
たとえ、こちら側の意見がまったくもって正論であっても(むしろ正論であればあるほど)、受け入れがたく感じる場合があります。
こちら側が感じている問題意識を、相手にも共有してもらうための方法としては、
・自分を主語に伝えたいことを考えてみる ・相手を責める表現にならないよう注意する ・感情的になっている時は話さない
まずはこの点に注意をしておくと伝わりやすいのではないかと思います。
自分を主語に伝えたいことを考えるというのは、「自分(=I)」を軸にした「アイ・メッセージ」と言われるコミュニケーション方法で、「(私が)困っているから、話を聞いて欲しい」、「(私が)気になっているから、それはやめて欲しい」という風に伝え方を工夫してみます。
伝えたいことは同じでも、「自分が主語」のメッセージは伝わりやすく、逆に「相手が主語」になると抵抗を生みやすいと言われています。
「(私が)困っているから、話を聞いて欲しい」 「(あなたは)どうしていつも話を聞いてくれないの?」
「(私が)気になっているから、それはやめて欲しい」 「(あなたが)いつになったらやめてくれるの?」
というようにですね。どうでしょう、印象が違いませんか?
「反省して」は逆効果。
自分を主語にするアイ・メッセージが効果的な理由のひとつは、相手に求める行動の背景にどんな理由があるのか?を、きちんと「私の気持ち」として伝えていることなのではないかと思います。
人は、理由もなく促される行動には無意識に否定的な反応を取ることが多いそうです。
反省を促すときも、原理は同じ。
何に困っていて、何が嫌で、と、まずはあなたが感じている問題意識を伝えることから始めることが大切。
そもそも話ができていない、としたらまずは話すことから、散々伝えてきたけれど分かってもらえないとしたら、伝え方を変えてみることが必要かもしれません。
話し合っても感情的になってしまう場合や、問題にフォーカスしすぎて疲れてしまった、という時には、もちろん冷却期間として距離を置いてみることも効果的に働く場合があると思います。
けれどそれは、夫婦間で問題が共有されている場合であって、共有されていない問題意識を夫に気づかせるための手段としての強硬的な方法は、効果よりリスクの方が大きいのではないかと思うのです。